STAFF STORY Interviews
STORY
03
北脇 佐保
エクスターナル エンゲージメント
シニアマネージャー
(写真上)2013年1月当時の小さな仮オフィス
(写真下)組織の枠を越えて集まった設立準備委員会のメンバー
自分の決断を信じて前に進んだ立ち上げ期
GHITとの出会いは、2012年の終わりにエージェントから声をかけられたことがきっかけです。それまでは主に、アイルランドのIT企業でソフトウェアを多言語化するプロジェクトのマネジメントに携わっていました。とてもやりがいのある仕事でしたが、中高からボランティア活動に打ち込み、弱い立場の人のために少しでも自分を役立たせたい、という強い思いは当時から絶えず持ち続けていました。開発途上国の患者さんや疾患が「顧みられていない」現状を、日本政府、製薬企業、ゲイツ財団が協力して改善しようとするイニシアチブに関わることが出来ることに魅力を感じ、私もその一員になりたいと強く思いました。
私がGHITに加わったのは、本当の意味で組織の立ち上げの時で、当時はスリングスビーと私の二人だけでした。組織の定款や規定、新たなスタッフの採用など、文字通り「一から」の準備でした。定款や規定を作成するにあたっては、弁護士や司法書士など、専門家の方のアドバイスを受けながら、日本政府、製薬企業、ゲイツ財団から成る設立準備委員会の皆さんと隔週で打ち合わせを行って進めていきました。会社や団体の垣根を越えて、GHITの立ち上げのために作られたこの準備委員会では、メンバーの一人ひとりがとても強い思いを持って取り組んでいることが印象的で、また打ち合わせを重ねる毎に全員の結束力が高まっていったのを今でも強く覚えています。GHITが無事設立され、こうして今も順調に運営ができているのは、当時から携わり支援してくださっている方々のお力も大変大きいと心から思っています。
当時を振り返ってみると、設立前の数か月は小さな仮オフィスで一人で作業をすることが殆どで、時には「今後どうなるのかしら?」と不安になることもありました。でも、スリングスビーをはじめ、設立準備委員会の皆さんのビジョンや熱意、組織の将来性を常に感じていたので、それを信じて前に進みました。今思うとこの時期は本当に大変でしたが、このときの経験があるからこそ、困難な状況でも乗りこえられ、協力しあえる同僚の大切さを気づかせてくれたのだと思います。
GHIT立ち上げ時の会議資料
GHITを取り巻くステークホルダーとの関係構築
GHITの役割は、官民の連携により、グローバルヘルスに貢献するという、一つの成功例を作ろうとしていることだと思います。この貢献は日本にとっても世界にとっても重要なものになると考えています。このような意味で、新しいモデルを作った意義は大きいと思いますが、本番はこれからです。実際に、GHITが投資した案件で薬が承認され、開発途上国の人々がその恩恵を受けられるようになってはじめて実績となり、本当の意味での貢献になると思います。
このような業務の中で私が担当しているのは、GHITの資金拠出パートナーである日本政府、民間企業、財団、スポンサー企業、理事などとの関係構築です。GHITでは年に10回近くの評議会、理事会、選考委員会が開催されますので、常にこうした方々とのコミュニケーションは欠かせませんし、皆さんのニーズや意見をお聞きして、気持ち良くGHITに関わって頂きたいと思っています。
相手の仕事や立場に敬意を持って接する
日々の仕事では、内部外部を問わず相手に敬意を払い、感謝することを心掛けています。GHITのステークホルダーは海外の方も多く、言語の違いとはまた違ったチャレンジングな場面に遭遇することもありますが、前職で30ヶ国を超えるチームメンバーが関わるプロジェクトのマネジメントをしていた経験を活かして、違いを受け入れ尊重することでお互いが気持ちよく仕事が出来るよう努めています。それでも時には無理な依頼や催促をしなければいけないこともありますが、GHITを支えてくださっているパートナーの皆さんを第一に考え、彼らの声を届けるつもりで、敬意に加えて粘り強さを持って調整を行っています。
また、GHITのような国際的な組織で働いていると、「帰国子女でないと働けないのではないか?」という質問をよく受けますが、私が重要だと感じるのはバランス感覚です。細やかな配慮を大切にし、日本的な仕事の進め方を理解する一方で、海外の多様な考え方を受け入れる姿勢、その両方を持ち合わせて臨機応変、柔軟に対応していくことが大切だと感じます。
今までで印象的なエピソードとしては、先ほどお話ししたGHITの立ち上げの準備に加えて、2013年6月1日に横浜で行われたGHITの評議会、理事会、設立記者会見です。日本政府、民間企業、ゲイツ財団のトップが一同に介する場を設定するにあたって、会議運営から担当者レベルとの細かい調整まで本当に多くのことを一度に学びました。同時に、GHITの会議に参加して頂く方々に、どのようにGHITへの理解を深めて頂き、有意義な時間だったと感じて頂けるのかを、考え抜くことの重要性も学びました。たった一日のイベントでしたが、私を含めたGHITの初期メンバーが大きく成長するきっかけになったと感じています。
この数年で何度も会議やイベントを行ってきましたが、ステークホルダーの方々と着実に信頼関係を築くことができていることが、仕事のやりがいにつながっています。始めは9団体だったパートナーが、今では26団体に増えました。新たなパートナーに参画いただけることはもちろん、設立当初から参画されている団体が継続して支援してくださっていることは、GHITのビジョンやミッションへの共感の証だと思っています。
2017年7月、ウェルカムトラスト(ロンドン)で開催された理事会
個性溢れる人たちと団結して物事を前に進める
GHITで働くことの魅力は「人」だと思います。まずは、外部の「人」。-資金拠出パートナー、スポンサー、理事、選考委員など、素晴らしい経験と知識そして情熱を持った方々や、世界の第一線で働いている方々と同じ目的を持って何かができることは、とてもやりがいのあることです。
次に、中にいる「人」です。GHITのメンバーはバックグランドも様々で個性豊かな人達が集まっています。時には他のメンバーにはない独自の強みを個別に発揮することもり、時には多様な個性が一つとなってGHIT独特の団結力を生み出します。立ち上げに加わった時代から、徐々に人が増え、組織が成長する過程を見ているので、この団結力には人一倍の感慨深さがあります。
これまでの5年間、GHITはスピード感に溢れ、常に「成長」という言葉が念頭にありました。「変化する」ことが当然だったように思います。現在は運営も軌道に乗り、対外的にもある程度知っていただけるようになったことに伴い、国際的な組織としての対応が求められるようになりました。今後はますます、私達自身がその自覚を持って日々取り組まなければならないと感じています。
目の前の仕事に全力で臨む
組織の拡大に合わせて、自身が担う業務の内容も拡大しチャレンジは増えますが、GHITを様々な角度から支えてくださる方々の存在と情熱、その方々が一つの目的を持って集う中心にいられることへの感謝の気持ちを忘れずに日々の業務に真摯に向き合っていきたいと思います。
プライベートでは、冒頭でもお話ししたボランティア活動、特に知的障害を持つ方達と関わることにもっと時間を割きたいと思っています。スペシャルオリンピクスという知的発達障害のある人の自立や社会参加を目的としたプログラムのアイルランド世界大会では日本選手団のボランティアとして活動し、その後長野で行われた冬季世界大会ではアイルランド選手団のボランティアとして参加したことは今も最高の思い出です。ただ、ボランティアで自分が何かをしたという印象はなく、笑ってもらえた!心が通じ合った!といった喜びをアスリートたちからもらうばかりの日々でした。これからはオンとオフのバランスをよく取って、またこのような取り組みに参加したいと思っています。
本インタビューに掲載の所属・役職名は、2017年のインタビュー公開時のものです。
- 略歴
北脇 佐保
エクスターナル エンゲージメント
シニアマネージャー銀行勤務を経て、アイルランドと日本両国においてIT関連企業のプロジェクトマネージャーを務める。2012年に初のGHIT社員として入社し、製薬企業・日本政府・ゲイツ財団と協同して設立準備を管理する一方、GIHT開設プロジェクトの一貫として人事・広報・経理等幅広く担当。現在は、GHITの窓口としてステークホルダーマネジメントに従事する。