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STORY

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鹿角 契

投資戦略 兼
ガバメント・リレーションズ
シニアディレクター


国立国際医療研究センターで、救急医として勤務

「単なる慈善事業ではない」国際貢献

中学・高校の時に、海外に行く機会が何度かあり、文化や物事の考え方の違いを肌で感じたことが、その後の人生に大きく影響を与えたように思います。また、同時期に『大地の子』というテレビドラマを見て、自分が生まれた日本、また近隣諸国のために何か貢献したいという考えを持ちはじめました。こうした経験が「日本と世界を繋ぎたい」という思いへと変わっていったように思います。その後、進路に関しては、世界中どこに行っても必要とされる医療、そして外交分野の両方に関わりたいと考えました。大学在学中は医学の勉強に加えて、異なる学部や他大学の人たちとも積極的に交流し、視野を広げようとしていました。大学卒業後は、国立国際医療研究センター(前:国立国際医療センター)にて勤務し、その後米国ジョンズホプキンス大学院で公衆衛生を学びました。大学院修了後、米国East West Centerを経て、世界銀行での勤務後、2013年設立時よりGHITに入社しました。

2012年末、GHIT設立の構想について知りました。その構想は、私が思い描いていた「医療と外交の分野に関わる」というイメージに近く、日本に貢献したいという思いをまさに実現できる場所だと感じました。


ペルーで実施されているマラリア治療薬の臨床試験視察

緻密な戦略づくりと、綿密なコミュニケーション

GHITの役割は、製品開発に特化した官民パートナーシップとして、グローバルヘルスに貢献するビジネスモデルにあると思いますが、実際にはそれだけではありません。資金調達においても、製品開発においても、グローバルなパートナーシップを通じて、社会問題を解決することが可能だということを国内外に発信することも、重要な役割であると捉えています。GHITが、感染症に向けた創薬開発という分野において着実に実績を積み上げていくことができれば、国内にとどまらず、国外でも、そして分野を越えて、第二、第三のGHITのような機関が生まれて来るかもしれません。

私はこれまで、GHITの投資戦略に携わってきましたが、この5年間、国内外の数多くの製薬企業、大学、研究機関など、実際に製品開発を行う方々と多くの仕事をさせて頂きました。GHITは、日本と海外のパートナーシップによる製品開発を投資の必須条件にしているので、必然的に日本と海外の両方とのコミュニケーションが必要になります。そうした状況の中で、新たな製品開発パートナーシップを構築するために、日本と海外の機関の間に入って調整をしたり、何か課題がある場合には客観的な立場で助言したりすることもあります。そして何より、GHITは日本のイニシアチブですので、日本の製薬企業、大学、研究機関にグローバルヘルス分野に継続して興味をもって頂き、積極的に関わって頂けるような環境づくりのために何ができるかを常に考えています。

さらにGHITの投資先である製品開発パートナーに対しては、私たち組織の方向性をきちんと理解して頂いた上で、課題や要望を都度確認しながらプロジェクトを進めていくことが大事だと思っています。ですので、普段から密に情報交換を行い、製品開発の伴走者として事業をサポートして行くことを心がけています。また、国内外の情熱を持った第一線の専門家の方々と直接日々やりとりできることは、大きな財産だと感じています。

救急医、そして国際機関での勤務経験を生かす

救急医として働いていた時に、「トリアージ」という、医療現場の状況や患者の症状に応じて、誰を優先的に治療すべきかを瞬時に判断することを常に要求されました。そのようなことを毎日繰り返したこともあり、今でもそういった観点で物事を考える癖がついています。また、世界銀行で勤務した際には、国と国、国際機関等における物事の進め方、外交的な考え方や所作を学んだように思います。こうした経験が、現在の仕事に活きているように感じます。

GHIT設立の時点では、いかに早く実績を出すかということが求められていました。設立後すぐに始まったスクリーニング・プログラムを担当した際、日本の製薬企業や研究機関と、海外の研究機関の間を調整するために、朝から晩まで電話で交渉していたことを今でも覚えています。Sense of urgency(切迫感)を常に大事にしていますが、当時はまさに医療現場に似た切迫感あるいは緊張感があったように思います。

また、今では、当時よりもさらに多くの国内外の機関と同時に連携する機会が増えています。コミュニケーションがより複雑化する傾向にあり、投資戦略を議論する際にも様々な点を考慮する必要があります。そのため、外交的なスキルが求められますが、私自身は非常にやりがいを感じています。

戦略性・創造性が必要とされる毎日

病院で働いている時は、目の前の患者を救うことに対して異論を唱える人はいません。そういった意味で全員の向いている方向はほぼ同じであったと思います。GHITでは、連携する各機関にそれぞれの考え方があるため、まず、大きな目標について合意を得る必要があります。

GHITのミッションを明確にした上で、関係機関・関係者が納得できる結果を出すにはどうしたらよいか、戦略的な思考や創造性が日々求められていると感じます。

これだけ毎日好奇心を刺激し続けられる職場は、なかなかないと思っています。また、ゼロから創造していくことが非常に多い職場であるとも感じます。日々新しいことに取り組めること、課題があってもチームで解決し乗り越え、共に前進できること、そんな機会がGHITにはたくさんあります。


World Health Summitのような国際会議にも参加し、グローバルヘルス関連機関との連携について議論を行う

GHIT、そしてPublic Private Partnership – 新しい働き方

「日本の製薬企業や研究機関がもつ創薬能力や技術・イノベーションを国際的につなぎ合わせることで、世界が直面する感染症という課題を解決していくことができる。」このことこそが、GHITの魅力だと思います。

グローバルヘルス分野に関わるにも、国際機関、非営利組織、研究機関、企業など様々な選択肢があります。GHITが、この分野における新しい働き方として一つの選択肢になることで、今後同じような志をもつ人たちに繋げることができたら良いと考えています。

GHIT第2期(2018-2022年)に向けて

国際的にもGHITに対する認知度が上がってきていると日々感じています。どのようにGHIT ができたのか、どのように運営しているのかなど、国内外で聞かれることが多くなりました。官民パートナーシップや資金調達の仕組みなどを参考にしたいと思ってもらえることはありがたい事です。日本発のグローバルヘルス・官民パートナーシップというビジネスモデルを牽引し、日本の国際貢献にさらにつなげたいと考えています。

本インタビューに掲載の所属・役職名は、2017年のインタビュー公開時のものです。

略歴

鹿角 契

投資戦略 兼 ガバメント・リレーションズ
シニアディレクター

GHIT Fundの投資開発戦略を統括。独立行政法人国立国際医療研究センター (前:国立国際医療センター)にて医師として勤務したのち、フルブライト奨学生として米国ジョンズホプキンス大学公衆衛生大学院で公衆衛生修士号(MPH)を取得。その後、米国East West Center、世界銀行勤務(ヘルススペシャリスト)を経て、2013年より現職。東京大学医学部医学科卒業。日本・米国 (ECFMG)両方の医師資格を有する。日米リーダーシッププログラム・フェロー。

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鹿角 契投資戦略 兼
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シニアディレクター
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