SPONSOR INTERVIEWSGHIT Fundとスポンサー企業が
共有するビジョン
-
ヤフー株式会社
宮澤 弦
ヤフー株式会社
上級執行役員 メディアグループ長
“ニュースになるようなことが起こらないと、感染症やグローバルヘルスに関する内容は、一般の人にはほとんど検索されないテーマです。だからこそ、Yahoo! JAPANとして、あえて取り上げることが大切ではないかと思いました。”
課題解決エンジンとして、ニュースにならないことを届ける
Yahoo! JAPANには、様々なパートナーメディアから毎日4,000件以上の記事の提供を受けています。最近では、Yahoo!ニュースを見て、毎日のニュースを知るという方も増えてきています。Yahoo!ニュースは、ニュース配信サービスとしての性質上、世の中で起こった「ニュース」に関してパートナーから記事をお預かりし、それを人々に届けるという役割を担っています。一方で、ニュースにならないことなどに対して、深く掘り下げてYahoo! JAPANのユーザーに伝えられないかと感じていました。
Yahoo! JAPANは、昨年ちょうど20周年を迎えました。今後はYahoo!ニュースを通してニュースをお届けするだけでなく、きちんと日本の皆さんに知っておいて頂きたいと考えることを、特集を組むなどして、様々な形で届けていきたいと思っています。そういう意味で、GHITのスポンサーになる話は、今後の私たちの方向性に合致しました。感染症などのグローバルヘルスの課題は、普段ニュースで目にする機会があったとしても、内容まで詳しく知らないことも多いと思います。それを日本の皆さんにお知らせするという立場で、何かお役に立てないかと考えました。
GHITからスポンサーのお話を頂く少し前の2014年の夏、代々木公園でデング熱が発生しました。東京都のいろいろな公園内で蚊が危険だという雰囲気があり、ニュースも流れました。そういった中で、感染症に対する注目度が上がっていたので、タイムリーだと思いました。逆に言えば、ニュースになるようなことが起こらないと、感染症やグローバルヘルスに関する内容は、一般の人にはほとんど検索されないテーマです。だからこそ、Yahoo! JAPANとして、あえて取り上げることが大切ではないかと思いました。
思わぬサプライズ
私たちとしても初めての取り組みでしたので、GHITと相談の上で、第一弾として、世界的に非常に大きな貢献をしている日本人の研究者5名へのインタビューを実施しました。そのインタビュー記事を、Yahoo! JAPANのドメイン上で日本語・英語両方で公開しました。研究者の選定や、インタビューの調整・実施を通じてGHITと協業しました。
2015年10月6日に、大村智北里大学栄誉教授のノーベル医学生理学賞の受賞が決まり、Yahoo!検索では大村先生に関する検索数が激増しました。あの記事は、こうなることは意図せずに、ノーベル賞受賞発表の数ヶ月前に大村先生を取材したものです。世間が注目しているときは特に、大村先生の人となりだけではなくて、どういう思いで研究をされてきたかというインタビュー記事をきちんと読みたいというニーズも強くなります。結果として、GHITと一緒に作った記事が存在していて本当によかったと思いました。
相乗効果として、大村先生の記事だけでなく、他の4名の先生の記事も読まれることになりました。素晴らしい研究をされている方がたくさんいらっしゃるので、彼らのストーリーが、多くの皆さんに関心を持って読んでもらえたことは喜ばしいことです。
今まで、他のメディアがあまり取り上げてこなかった研究や素晴らしい先生方に着目したことだけでなく、その中からノーベル賞の先生が生まれたことは、本当に驚くべき幸運です。今後もこういった形のインタビューをシリーズ化したいと考えています。
“まずはグローバルヘルスの課題を知ってもらい、そこから何かしらの行動を起こすきかっけをつくることが重要です。”
課題解決エンジンとして
Yahoo! JAPANはITの力で人や社会の課題を解決する「課題解決エンジン」をミッションとして掲げています。日本だけでもとても多くの数の課題があります。その中で、ニュースにならないことであっても、社会に潜んでいる課題に光を当てて、皆さんに知って頂くきっかけをつくることに取り組んでいきたいと思っています。
今回のプロジェクトに取り組んだチームは、モチベーションが高い人たちの集まりです。私が指示したわけではなく、やりたいという人を中心に有志で集まりました。そもそも、Yahoo! JAPANには、インターネットを使って何か世の中を便利にしたいとか、課題を解決したいとか、そういう志を持って集まってきている人が多いです。もちろんビジネスなので、収益を生まないと継続はできません。でも、それだけではなく、もっと自分たちにできることがあるはずだと思っている人は社内に多いと思います。GHITとのプロジェクトのように、直接的な収益には結びつかなかったとしても、社会のためにプラスになることは、参加を希望する人も多いですし、協力を得やすい傾向はあると思います。
「課題解決エンジン」を掲げる会社として、社員が社会の課題や、解決すべき問題を自ら見つけにいくことはとても重要だと思っています。もともとYahoo! JAPANには、課題解決休暇という制度があります。これは、年間3日までボランティア活動などの休暇を取得できるという制度です。例えば、熊本の震災の時に手伝いに行ったり、また、近くの駅の前のごみ拾いをするなど、何らかの課題解決につながる活動に携われば休暇が取れます。こういった社会的な活動によって、社員、そして会社が課題解決に取り組む糸口になればと思います。
健康×インターネットのこれから
私はふだんインターネットに携わる仕事をしているため、どうしても取り入れる情報はインターネット関連のものが多くなります。GHITとの出会いをきっかけに、私自身がグローバルヘルスについて知る機会をもらいました。日本ではすぐ治るような病気によって世界中の多くの人が命の危険にさらされていたり、逆にそれに対する薬をつくることで、多くの人の命が助かったりすることなど、多くの学びがありました。また、知識だけでなく、グローバルヘルスに日本人が多くの貢献をしている事実に勇気づけられました。ふだんインターネットサービスだけをやっていては知ることのなかった、今地球で起こっている現実を、改めて知るきっかけになりました。今後、健康の分野とインターネットはさらに密になっていくと思います。今まではつながりが薄い分野だったと思いますが、今はApple Watchなどのデバイスと連動して心拍数を測って記録したり、インターネットが健康の情報を得る手段として利用されつつあったり、両者の関係はより身近なものになってきています。私たちとしても、どんどん視野を広げていかなければならないと危機感を持っています。
すべては、知ることからはじまる
Yahoo! JAPANという企業がGHITのパートナーになることで、多くの人にGHITの取り組みや、グローバルヘルスを知ってもらうきっかけを作れると考えています。人は、知らないことに関しては行動をおこせません。まずはグローバルヘルスの課題を知ってもらい、そこから何かしらの行動を起こすきっかけをつくることが重要です。私たちが取材した記事を読んで、例えばもっと自分で勉強したいと思う人もいるかもしれないし、どこかの団体に寄附しようと思った方もいるかもしれない。Yahoo! JAPANがそういうきっかけを提供することができたのであれば、うれしいです。
グローバルヘルスの領域の課題を解決したり、目に見える成果が出たりするまでには多くの時間がかかるでしょう。でも、その過程の中で、今年はこれだけの結果が出ましたとか、いま何に取り組んでいますとか、発信し続けることが重要です。課題は、常に動くものです。その動きの中で、GHITとともに、グローバルヘルスの課題の整理や、解決に向けた取り組みの発信などが一緒にできたらいいと思います。
本インタビューに掲載の所属・役職名は、2017年のインタビュー公開時のものです。
- 略歴
-
宮澤 弦
ヤフー株式会社 上級執行役員 メディアグループ長
1982年生まれ、2004年東京大学卒業直後に株式会社シリウステクノロジーズを創業、代表取締役に就任。モバイルSEO事業や位置情報に連動したモバイル 向け広告配信事業を手がける。 2010年8月、ヤフーにより買収後はYDN(インタレストマッチプロジェクト)のプロジェクトリーダー、2012年7月よりマーケティングソリューションカンパニー事業推進本部長、2013年4月よりメディアサービスカンパニー検索事業責任者に就任。 2014年4月より執行役員(最年少)、検索サービスカンパニー長に就任。2015年4月より検索に加え、トップページやニュースなどを含めたサービスを管掌するメディアカンパニー長就任を経て、2016年4月に2つのカンパニーをグループ化したメディアグループ長に就任。 北海道札幌市出身。