SPONSOR INTERVIEWSGHIT Fundとスポンサー企業が
共有するビジョン
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ANAホールディングス株式会社
魚田 夏紀
ANAホールディングス株式会社
コーポレートブランド・CSR推進部
リーダー
“ GHITの活動は、
まさに私たちの考えに
ぴったりだと感じました。”
航空会社ならではの感染症対策への思い
ANAグループは航空運送を中心とした事業に携わっているので、感染症が国際社会にもたらす影響の甚大さを痛感するとともに、我々が果たすべき責任について常に考えてきました。SARS、インフルエンザ、エボラなど、記憶に新しいところでもいろいろな感染症が起こっています。これまで、航空会社として最も大切な安全を守るべく、機内や空港における水際の防止策を通じて、感染症の影響を最小限に食い止めることに尽力してきました。一方で、こうした防止策の他にも、何かできることがあればよいのにと感じていました。
2014年にGHITの活動を知る機会がありました。私たちが大きな社会的課題として認識していた感染症の問題に、真正面から取り組まれている日本発の国際的な基金があるというお話を伺ったのです。スポンサーのお声かけを頂いた時、「ANAがこの活動に参加しないという選択肢は考えられない!」と思いました。感染症が発生してから緊急的に対策を打つことも重要ですが、感染症を未然に防ぐためのワクチンや新薬を開発したりすることに対して、ANAが持つ資源が少しでも役に立つのであれば素晴らしいと感じました。
ANAとGHITの意外な共通点
ANAグループは「安心と信頼を基礎に世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します」という経営理念を掲げています。言葉の通り、「世界をつないでいくこと」がミッションです。それは、日本と世界、そして世界中の人たちをつなぐこと、人と人、物、情報など、さまざまな出会いによって、新しい価値やイノベーションを生み出すためのサポートをさせていただくことだと考えています。
そういった意味で、GHITの活動は、まさに私たちの考えにぴったりだと感じました。なぜなら、GHITが目指していることは、今、社会が抱えている課題を根本的に解決していくために、日本の技術力を生かし、それを世界のさまざまな人や組織をつないで新しいイノベーションを生み出していくことだからです。
航空会社の現場で起きていること
私たちのビジネスの中心は、人や物を運ぶことです。重大な感染症が発生・蔓延した場合、国際線のみならず全事業の需要減退リスクになり得ます。実際に感染症が起きれば、やはり人の心情として、お客様も社員も不安を感じます。感染症そのものの実際の怖さもそうですが、漠然とした不安感から海外渡航はもとより、国内移動も控えよう、旅程を延期しようという動きになるでしょう。風評によってお客様の航空利用の意向が低下すれば、国内線も含めて利用者は減少し、ANAグループの経営に大きな影響を及ぼしかねません。
私たちの仕事は、お客様を安全安心に次の目的地までお届けすることです。感染防止のためにできることを徹底して取り組むことはできますが、感染症が起こること自体は、自分たちではどうしようもできないことです。GHITへのサポートを通じて、感染症の拡大リスクの低減に向けて間接的にでも取り組めるのは、とてもありがたいことです。社内でもこの活動の重要性は理解されていて、スポンサーシップの話はスムーズに進んでいきました。
“イノベーションを生み出す
様々な人々をつなぐことで
製品開発が進むことになれば、
新しい価値を創ることに
携わることができます。”
新しい価値を創りだす場をつくる
私たちはスポンサーとして、GHITの運営に必要な渡航にかかわる支援をさせて頂いています。具体的には、GHITが年に2回日本で開催する選考委員会に、北米、南米、アジア、欧州、アフリカなど世界各地から出席される研究者・選考委員の皆様の渡航費用の一部をサポートしています。IT技術が急速に発達し、電話会議システムなどもより便利になっているので、実際に顔を合わせた会議のために出張する機会は減る傾向にあるかと思います。一方で、直接会って話をするからこそ、生み出せるものもあると思います。感染症問題の解決のために、国や地域、所属する機関も異なる研究者と、選考委員の方々が実際に顔を合わせてプロポーザルの詳細について議論を行うことは非常に重要であると伺っています。その場をつくるお手伝いができるのは、とてもうれしいことです。
私たちは薬やワクチンを創ることはできませんが、イノベーションを生み出す様々な人々をつなぐことで製品開発が進むことになれば、新しい価値を創ることに携わることができます。実際、多くの開発プロジェクトが進んでいるとお聞きしていますので、私たちのスポンサーとしての活動も少なからずお役に立てているのかなと思います。
使命感の共有
地球温暖化が進むにつれて感染症はどうなっていくのか、5年、10年後はより深刻な状態になっているのではないかなど、感染症の問題は専門家でも予見するのが難しいと伺いました。GHITのスリングスビーCEOがおっしゃっていたことで強く印象に残っていることがあります。それは、「先が見えないからこそ、将来の懸念に対処していかなければならない。わかっていることは、今、取り組まなければならないということ。なぜなら、薬を作るには10年近く、場合によってはもっと長い時間がかかる。今、誰かが取り組み、継続的にやり続ける必要がある。」というお言葉でした。そうすれば、10年後の世界が変わるかもしれない、未来はより明るいものになるかもしれない。私はその使命感にとても共感しました。持続可能な社会を作っていくという共通のミッションのために、ANAをはじめとしたさまざまな企業や機関がそれぞれの得意分野で強みを発揮し、GHITと共に課題に取り組むことは、大きな力を生み出す可能性を拡げるという点でも非常に重要だと思っています。
2020年に東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されますが、これを機に、人々の国内外への流動はますます増えていくでしょう。そのような環境下、いつどこで感染症が起こって、世界に拡大するかはわかりません。社会インフラの一翼を担う航空会社として、今後も常に感染症が起こりうることを想定し、お客様や社員の安全を第一に考えながら、官民が連携して様々なシミュレーションや準備を行っていきます。また、GHITとも協働しながら、感染症に関する社内外での地道な啓発活動にも継続的に取り組んでいきたいと考えています。
本インタビューに掲載の所属・役職名は、2017年のインタビュー公開時のものです。
- 略歴
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魚田 夏紀
ANAホールディングス株式会社
コーポレートブランド・CSR推進部 リーダー神戸大学教育学部卒業後、1993年ANAに入社。
客室サービス、営業、人事、CSRなどの職務を経て、現在、ANAグループ全体のコーポレートブランディングを担当。